2010年7月26日月曜日

燕の子、巣立ち鳥


この小鳥は何の鳥の赤ちゃんだろう。
まだ産毛のような毛だ。
近所の方が、きっと燕の子だろうと言った。
それにしても、巣は近くに見当たらないから
どこから、どうやってこの位置にまで来たのか。
  
水を近づけると少し飲んだ。
足の爪はしっかりと細い柵を掴んでいる。
しかし、眼は次第に閉じていく。
まわりは大きな鳥が飛び交い騒然としていた。
小鳥を心配しているのだろうか。
獲物として狙っているのだろうか。
   
約20分後、又見に行ってみると
もう姿は無かった。
   
   
 暮れてなお人家離れず巣立ち鳥    茜
   
  (くれてなおじんかはなれずすだちどり)
    
夏の季語; 燕の子、巣立ち鳥(春、初夏)

2010年7月19日月曜日

髪洗う


              (小鮎川の夕暮れ)

「私の髪を洗ってくれないか」
母が亡くなる数年前のある日、突然言った。
八十五歳だったと思う。
一人で東京へ遊びに来ていたから、まだ元気だった。
    
母の髪を初めて洗った。
小さな頭だった。
自分から頭を差し出す仕草にハッとした。
この小さな母から産まれ、こうして母から洗って
もらったのだ。
小さな頭の細い髪を撫でるようにして洗った。
   
  
 吾子のごと屈める母の髪洗う     あかね
  (あこのごとかがめるははのかみあらう)

生き抜きし小さな母の髪洗う     あかね
   
  
夏の季語; 髪洗う

2010年7月13日火曜日

えごの花、登山



坂を下りる時には気づかなかった。
えごの花が散って実になっていたのだ。
帰り道を上る時に、向こうの空が透けて初めてわかった。
   
まわりが緑になってしまい、実がなっても色づくまで
気にならないのだ。
この坂は、春には「ニセアカシア」夏には「桑の実」
「みかんの花」が道路にせりだしてくる。
  
いい勾配の坂は運動する人にはいいらしく早足の人と
すれ違った。モンブラン登頂を目指している人だった。
  
  
  登山帽力のこもる握手かな     あかね
  
   (とざんぼうちからのこもるあくしゅかな)
  
夏の季語;えごの花、 登山

2010年7月8日木曜日

捩花(ネジバナ),もじずり


     (季節の花 300より)
もじずりは、芝の根に奇生するランの一種だという。
螺旋状に捩れている花の付き方は面白い。
右巻き、左巻きもあるようだ。
自然界のものは個性的だ。
どれ一つとして同じものはない。
その個性のまま、大きくも小さくも精一杯生きている。
   
  
  捩り花謝すれば軽くなるものを      茜
  
   (ねじりばなしゃすればかるくなるものを)
  
夏の季語; もじずり、ねじりばな

2010年7月1日木曜日

白い服



白い服は、ワイシャツから作りました。
つれあいが職をひくと、白いワイシャツの出番がほとんど無くなった。
まだ張りのある木綿の生地は、私には素材に見えてくる。
  
一枚はブラウスに、
二枚でスカートを作った。
手持ちのレースをたっぷり付けて。
  
創作の好きな私は、この一枚の布から何を作ろうと
考える時が至福の時だ。
デザインを考え、製図して、裁ち、縫う。
そうして、これまでに何枚の服を作っただろう。
簡単そうに見える服は、家人には人形遊びの延長に見えるらしい。
少し恥ずかしく、少しうれしい 白い服だ。
   
   
  闇空の芯の明るき小暑かな      茜
  
    (やみぞらのしんのあかるきしょうしょかな)
    
夏の季語;白い服、小暑