2011年6月30日木曜日

翡翠(かわせみ、ひすい)


    (嘴の黒い雄、 下嘴の赤いのは雌)
 翡翠(かわせみ)はしばらく動かなかった。
この川をテリトリーとして下流から上流へ
又逆方向へと飛ぶのを止めない。
その翡翠が、川の曲がり角の土手に休んでいたのだ。
大きな目には何が映っているのだろう。
一年を通して見られる鳥だが、色の涼しさから
夏の季語とされるようだ。

川幅2m、水嵩50cm程の小川をこの世と
忙しく飛び回っているのだ。
私の動体視力では追うことは出来ない。
今日はどこに出没しているだろう。
  
  
  
 翡翠の飛ぶや光となりにけり     茜
 (かわせみのとぶやひかりとなりにけり)
    
 翡翠や風も日も澄む山暮らし     茜
  
  
夏の季語;翡翠(かわせみ、ひすい)

2011年6月27日月曜日

早苗田(さなえだ)



 田植えのすっかり終わった峡(かい)は
湿気か水蒸気のようなものに満ちていた。
空気がすでに濡れているのだ。
降りそうで降らない天気は、向こうの山々を
煙らせていた。
梅雨霞という季語がありそうに思った。
  
畦の花は「イヌゴマ」です。(絶滅危惧種)
年配の方が作っていらした田んぼでしたが、とうとう
今年は作られませんでした。草が繁ってしまった
田の畦に咲いていました。
   
   
   
 峡一つ濡らしていたる植田かな    茜
  
 苗の列我が田のごとく眺めけり    茜
  
 早苗田へ音を消しつつ入る水     茜
  
  
  
夏の季語;早苗田

2011年6月24日金曜日

ジャカランタの花


 ジャカランタの花です。
リスボンのある街道の並木となっていました。
10Mあるような高い樹から、まだ3Mの若い樹も
ありました。
しばらく佇っていると、甘い香りが降りてきて
散った花を拾いました。
以前最初にこの樹を見た時の感動が今もあり、
紫の塊に見える房咲きのジャカランタの
樹を見つけるとうれしくなりました。
   
   
   
 ジャカランタ咲いて日除けを伸ばしけり   茜
 (じゃからんたさいてひよけをのばしけり)
   
   
夏の季語;日除け

2011年6月21日火曜日

素足(すあし)


 街角で見たドイツのパン屋さん。
噛みごたえありそうな、大きい黒いパン。
柔らかい食パンに慣れている私達にとって
手ごわい感じ、酵母の匂いも違います。
   
旅を終えて帰国しました。
庭は草茂り、梅雨、と季語の世界へ
戻ってきました。
家の匂いをはっきりと感じるのは、帰った時の
瞬間でしょうか。
我が家はそこはかとなく黴の匂いでした。
   
   
   
 久に踏む素足よろこぶ畳かな    茜
 (ひさにふむすあしよろこぶたたみかな)   
   
   
夏の季語;黴(かび)、素足(すあし)

2011年6月16日木曜日

お花畑(おはなばたけ)


   (アイガー南壁を望むグリンデルワルトにて)
 子供の住むドイツからスイスまで片道飛行機代
6千円程で行けるというので、急遽行く事にした。
目的地はユングフラウヨッホである。
3454Mの高さまで岩山の中をくり貫き登山鉄道が
通っているのだ。
岩の中のトンネルを抜けて下車すると、
そこは3454Mの地である。
氷河と万年雪の世界、
ふらふらする感じだった。
  
登山鉄道の脇の花畑のきれいな事。
見たこともない花がいっぱい。
あー!いう事なし・・です。
   
   
   
 アイガーを望むテラスやお花畑     茜
 (あいがーをのぞむてらすやおはなばた)
   
  
  
夏の季語;お花畑

2011年6月13日月曜日

雷(かみなり)


 リスボン名物といわれる「鰯」を食べた。
鱗もしっかりと付いて、腸もきれいな形だった。
ただ焼いただけの鰯だが、ワインビネガーをかけて
食べると、今まで食べた鰯の中でも最高の旨さだった。
   
街のお菓子屋さんには、大人の男達が多く、一杯飲んで
いるかと間違う程、ショーケースに凭れてお菓子と
エスプレッソを飲んでいた。
揚げパンやプデイングのようなお菓子が、懐かしく
日本の味を思いだした。
   
鉄砲を種子島へ伝えた国という認識だったが、
それを話してくれる人と出会う事はなかった。
   
   
   
  遠雷や風の冷たさ何処より     茜
  (えんらいやかぜのつめたさいずこより)
   
   
夏の季語;雷(かみなり)

2011年6月11日土曜日

片陰(かたかげ)


 リスボン(ポルトガル)は石畳で覆われた街だった。
   
1755年の大地震でリスボンの街は壊滅状態
だったという。
その跡に又街を復興する事になった時、
建物の高さを揃え、外壁の様相を規制し、
碁盤の目に道路を作ったという。
それから250年の間人々が歩いた石畳は、
滑らかでつやつやとしていた。
    
職人が補修していたが、5cm角からの大理石を
土に木槌で打ち込み、目地は砂で何度でも再生して使えるエコだった。
雨が降ったら、何パーセントかは目地の砂が
吸い込むだろう。
丘の頂上の城への道も、路地裏も石畳だった。
鉄砲を私の故郷種子島へ伝えたポルトガルは、幼い頃から親しみを持っていた国だったが、
それを話してくれる人と出会う事はなかった。
      
     
  
  
 片陰やモザイク補修の石畳      茜
   
   
夏の季語;片陰(かたかげ)

2011年6月7日火曜日

夏蝶(なつちょう)


 家から15分程歩くとライン河に突き当る。
河幅300Mはあるだろうか、ゆったりとした
流れである。河川敷を含めると1KMだろう。
  
河川敷の広い原っぱを犬を連れた人々が行きかっていた。
どの犬にも紐はついていなかった。それでも主人に
従っていて吠える事もなく良く訓練されていた。
が、一歩草の中に入ると糞がいたるところに・・
犬の税金を納めるから、糞の始末はしないとか。
  
電車に乗る時。切符は買うけれど改札口が無い。
抜き打ちの検札が時々あるらしい。
犬も自転車も料金を払って乗れるらしい。
電光掲示板はあるが案内アナウンスも無い。
全体に静か、雑音が少なく大人社会という感じだ。
路面電車に夕方、食堂車が付いているのを見た。
ビールだけを飲んで賑っていた。
  
国が変われば社会の仕組みも変わる。
という事ですね。

   
    
   
夏蝶に渚やさしきライン河      茜
    
   
夏の季語;夏蝶

2011年6月4日土曜日

薄暑(はくしょ)


 ドイツの初夏は「アスパラガス」が旬である。
着いてさっそく市場へ行ってみると、白いアスパラ
ガスが山と積まれていた。買うとすぐに皮剥き機で
剥いてくれる。白いアスパラの皮は硬くて食べない。
1kg 15本位 700円。
1本の大きさが、直径3cmで、長さ25cm程だから
その食べ応えがわかるだろう。
茹でてオレンデーズソース(バタークリームのような)
をかけて食べるのが一般的のようだ。
茹でたての熱いアスパラは、日本の掘りたての筍を
茹でた時の味にどこか似ているように思う。
さくらんぼ、チーズ、ビールと食べたい物がいろいろ
ある。楽しみです。
   
   
   
 アスパラガスの皮の剥かれる街薄暑     茜
       

 マルクトに山盛り並ぶアスパラガス    孫茜
  (マルクト→市場の事)
     
  
夏の季語;薄暑、さくらんぼ