2012年2月26日日曜日

冬木の芽


 まわりの山を見渡すと、木の芽のせいで赤く
なってきている。
夏の黒々とした緑の重そうな山と違い、冬の
葉が落ちてしまった山の、心細そうな寒々とした
たたずまい。
地肌の凹凸まで透けて見えそうだ。
その単色だった山にも、春のきざしが表れて
まず木の芽の色がはっきりとし始めた。
緑の葉も芽の時は赤い、赤に何かの意味が
あるのだろうか。
この堅い芽が開き始めると、木の輪郭を画く
ように一本一本をそれぞれの色で際立たす。
その木々の間を歩く日が待ち遠しい。
  
   
   
   
 あかあかと冬芽整う雑木山       茜
 (あかあかとふゆめととのうぞうきやま)
  
   
冬の季語;冬芽

2012年2月25日土曜日

薄氷(うすらい)


 薄氷はうすらい、うすごおりとも読みます。
春先の寒さでうすうすと張る氷の事です。
田んぼの山際の所は、いつも日影になっており、
いつの雨なのか水溜りもあり、田は乾く暇もなく
湿っている。
そこへ薄氷が張っていた。
表面へ付いている泡は何時出来るものだろう。
そばには、セリが青い葉を広げている。
このセリの葉にかかっている薄氷はうまく撮る事
ができなかった。
  
  
  
  
 薄氷の泡傾かす草の息        茜
 (うすらいのあわかたむかすくさのいき)
   
 薄氷の泡傾くは草の息        茜  
  
   
春の季語;薄氷

2012年2月22日水曜日

春待つ


 ゼラニウムの葉が寒に焼けたというのだろうか、
赤くなり華やぎとなっている。
  
 先日乗り合わせた電車が停車駅に止まると
突然老人が車両の通路へ倒れこんだ。
口から泡を吹いて見るからに重篤な様相だった。
やがて駆けつけた駅員が「救急車が来ます。」と
言うので、乗客達は黙って見守った。
その間若い駅員が慣れない手つきでAEDを使っ
たりしたが10分か15分してから救急車は到着。
その間の長かったこと。すぐにAEDを使っての
措置をし心臓マッサージを施したが、あの後老人
は、どうなっただろう。
私は、10年前「救命措置」の講習を受けていた。
心臓マッサージも出来ると思う。あの時すぐそば
で倒れた老人に、何故躊躇したのだろうと今悔や
んでいる。
少しの勇気と行動が必要と思った。
今は人口呼吸はしなくても、心臓マッサージ
だけで良いという事である。
  
   
   
  
 春待つや真綿に包む貝標本       茜
 (はるまつやまわたにくるむかいひょうほん)
   
   
   
冬の季語;春待つ

2012年2月19日日曜日

クレソン


 クレソンはきれいな水に育つという。
上古沢という地名が表すように、山から滲み出た
水が集まってきて小流れを作っている。
クレソンはその流れに守られているかのように
かたまって育っていた。
この小川に名前がつくのは、少し下流の広くなる
川幅になってからのようだ。
オランダ辛子(からし)という和名のとおり、
辛味があり料理にそえたりサラダにして食べる
事ができる。
   
   
   
 分岐してクレソンへ行く山の水     茜
 (ぶんきしてくれそんへいくやまのみず)
   
   
  
春の季語;クレソン

2012年2月16日木曜日

食は彩り




 食は暮らしの彩りだと思う。
一日三度の食事を摂っているが、美味しく食べる
為にいろいろ気を使っている。
三度もだから飽きがこないように同じスープでも
薬味を、ネギ、パセリ、パクチーと変えるだけで
和風、洋風、タイ風にもなる。
彩りとはちょっとした変化の事である。
朝食が終わったら、もう昼の食事の事を予定しな
くてはならないから、テレビで仕入れたアイデア
はすぐに使ってみる。
写真は我が家のささやかな今の楽しみです。
   
上は友人特製の金柑漬け。
  直径3cmある金柑を半分に切り、種を
  取り除き氷砂糖で煮ている絶品!

中は塩麹と切干大根の薄い三杯酢漬け。
  塩麹に漬けたお肉は2倍美味しい。
   
下は干したえのき茸を砂糖醤油で乾煎りしたもの。
  スルメの味がしてビールのつまみに良し。     
    
   
   
    
      
 春キャベツ軽い空気を芯に抱き     茜
 (はるきゃべつかるいくうきをしんにだき)
  
  
  
春の季語;春キャベツ

2012年2月13日月曜日

二月


 赤鶏の丸ごと一匹を冷凍食品売り場で見つけた。
それ以来、この冬何度もこの料理になった。
丸ごと一匹を大鍋に入れ、コトコトと煮るだけ。
透き通ったスープに油はあまり浮かず、濃厚な
味となっている。
肉は解けそうになる程柔らかくなり、
一日目は鶏のもも肉付近の肉をたっぷり、
二日目はスープで聖護院大根を煮て、
三日目はスープをご飯にかけておじや風に。
  
写真はスープをかけたご飯です。
庭で栽培のルッコラと
黒いのは、棗(なつめ)です。
塩麹を少し入れて味付けします。
   
   
   
  
 時かけて二月の水に何浸す       茜
 (ときかけてにがつのみずになにひたす)
   
   
  
春の季語;二月

2012年2月10日金曜日

絵皿(チャイナペイント)


 いろいろやってみたいという思いはいつも
持っていた。
子供の時の、手作りの人形の服に始まって
現在に至るまで、手作りが好きなのだ。
絵も描きたい、本も読みたい、野菜も花も作りた
い、でも年相応に目も遠くなり、車の運転も鈍く
なり、忘れ物も多くなった。
今までやってこれた事に感謝しよう。
まわりの人に感謝しよう。
今の自分にふさわしく出来る事とできない事を
より分けながらやっていきたいと思う。

絵皿は、早春をイメージして描いたものです。
花の白い色は皿の白を活かしています。
  
  
  
  
 早春の匂いの一つ濡れ若木       茜
 (そうしゅんのにおいのひとつぬれわかぎ)
   
   
  
春の季語;早春

2012年2月9日木曜日

冬帽子


 写真は、横浜の日本丸の船内に展示してあった
紐の結び方の一部です。
知っているようで知らない結び方。
  
神事に使う玉串や注連縄に下がっている白い紙、
四手(しで)の事ですが、これもどう切っている
のかわからない。
  
昔から伝えられているものには、いろいろ意味が
あり合理的に考えられていて、紐等もっと知りたい
事がたくさんあります。
   
   
   
   
 背伸びして神事遠巻き冬帽子      茜
 (せのびしてしんじとおまきふゆぼうし)
   
   
  
冬の季語;冬帽子

2012年2月7日火曜日

日向ぼこ


 主人の母が92歳の頃、まだ歩いて家に入る
ことが出来た。施設に入居しているが久しぶりに
家へ帰ってみたいという要望で、もう誰も住んで
いない我が家へ寄ってみる事になった。
中へ入ると、大方整理をつけてきた家の中を
見回してから箪笥の前へ行くと、引き出しの中の
着物をほとんど畳の上へ出して言った。
「もう着れない。持って行ってどうにでもして
いいから。古いのだから捨てて。」
それで心の整理をつけたように、きっぱりと
言った。
勿論小柄な義母の着物は私には合わなかったが、
義母の気持ちを思うと、すぐに捨てられるもの
でもなかった。
白い帯を解いてクッションを作り、車椅子の上で
使えるようにして送った。
98歳になったが今も元気で過ごしている。
   
   
  
 繕いは治療にも似て日向ぼこ      茜
 (つくろいはちりょうにもにてひなたぼこ)
   
   
  
冬の季語;日向ぼこ

2012年2月5日日曜日

ぶらんこ


 友人の新築のお宅に招かれました。
ご夫婦の理念が通った木の家に、一歩中へ入ると
新しい木の香りにまず癒されました。
天井の高さ、柱や梁の太さ、床の感触、
土壁の心地よさ。
どちらを見ても素直にうれしくなる作りです。
一度は住んでみたい白木の家、家と一緒に
呼吸しているような気持ちになりました。
有難うございました。
   
   
   
 
 木の家の梁にぶらんこ空見えて     茜
 (きのいえのはりにぶらんこそらみえて)
     
  
春の季語;ぶらんこ

2012年2月3日金曜日


 冷え込む日が続いています。
こちらは雪は降りませんが、霜で真っ白になる
朝があります。
霜は、空気中の水蒸気がそのまま凍り、地表等に
付着する氷晶です。
快晴無風の夜に発生し、夜が明けると一面真っ白
に見えるのです。
この付着した氷は朝日に溶けて、地面を潤す
のでしょう。
ザクザクと音を立てて踏んで歩きます。
めったに朝は歩きませんから貴重な足音でした。
   
   
   
   
 風のなき葉先に霜の重からむ      茜
 (かぜのなきはさきにしものおもからむ)
   
   
冬の季語;霜

2012年2月1日水曜日

蝋梅(ろうばい)


 蝋梅の何という清やかな香りだろう。
花のふくらみに、蝋を塗ったような光沢がある。
  
伊勢原市に日向薬師があり約1280年前に開山
したと言われている。
初詣でのさい、350年ぶりに平成の建替えと
いう事で、宝物殿に全部の仏像を集めて安置され
ていた。
20体もある仏像に囲まれて座ると、どこか別の
世界へ誘われそうな気持ちになった。
中でもある仏像の前に座った時、それまで伏目
だった仏像の目が、見上げた私の目と合う体勢に
なり思わず手を合わせたのだった。
   
   
   
  
 膝折りて目の合う木仏日脚伸ぶ     茜
 (ひざおりてめのあうきぶつひあしのぶ)
  
   
冬の季語;日脚伸ぶ