蝉の抜け殻に、白い毛のようなものが立っている。
毎年見るたびに、これは何であるかを知りたかった。
蝉が脱皮するのは、全身であり、眼や脚はもちろん、
呼吸器の気管も脱皮する。
その呼吸器等の管の脱皮した物が白い糸状になっているのだ。
だから、殻を割ってみると中には約20本の白い糸が並んでいる。
あらゆる処からの管の痕なのだった。
やっと解ってうれしい。
ちいさな児が両手に蝉の殻をいくつも載せていた。
「一つちょうだい」と言うと、「あっちにあるよ」といって歩きだした。
空蝉を捧げもつ児について行く 茜