10月から禁魚期に入るので、今年最後の渓流釣りだった。
車で少し山へ入ると、すぐに渓流の谷へ近づく。
通い慣れた細い山道を歩き、夫は一人で沢へ下りていく。
辺りは谷から聞こえる瀬の音が響くだけ、静かな山の中である。
私は、昼過ぎの少し斜めに射してくる太陽光を背に、
草や木の実の写真を撮っている。
釣り人が通りかかり、「釣れましたか」と聞く。
「いいえ、全然です」と答える。
釣れていてもそう答えるように夫からいわれているからだ。
今日も二人分の夕飯のおかずは捕れたようだ。
沢釣りに薄の光り及ばざり 茜