2012年2月7日火曜日

日向ぼこ


 主人の母が92歳の頃、まだ歩いて家に入る
ことが出来た。施設に入居しているが久しぶりに
家へ帰ってみたいという要望で、もう誰も住んで
いない我が家へ寄ってみる事になった。
中へ入ると、大方整理をつけてきた家の中を
見回してから箪笥の前へ行くと、引き出しの中の
着物をほとんど畳の上へ出して言った。
「もう着れない。持って行ってどうにでもして
いいから。古いのだから捨てて。」
それで心の整理をつけたように、きっぱりと
言った。
勿論小柄な義母の着物は私には合わなかったが、
義母の気持ちを思うと、すぐに捨てられるもの
でもなかった。
白い帯を解いてクッションを作り、車椅子の上で
使えるようにして送った。
98歳になったが今も元気で過ごしている。
   
   
  
 繕いは治療にも似て日向ぼこ      茜
 (つくろいはちりょうにもにてひなたぼこ)
   
   
  
冬の季語;日向ぼこ